【研究成果】日本人におけるアクリルアミド-ヘモグロビン付加体濃度の報告、ならびに陰膳法および食物摂取頻度調査票から推定した食事由来アクリルアミド曝露量との関連



日本人におけるアクリルアミド代謝の生体指標であるアクリルアミド-ヘモグロビン付加体濃度の報告と食事調査から推定したアクリルアミド摂取量との関連を実施した研究を専門誌で論文発表しま
したので紹介します。
(https://www.mdpi.com/2072-6643/12/12/3863 2020年12月ウェブ上に公開)。




日本人におけるアクリルアミド-ヘモグロビン付加体濃度の報告、ならびに陰膳法および食物摂取頻度調査票から推定した食事由来アクリルアミド曝露量との関連

J.Yamamoto, et al. Acrylamide–hemoglobin adduct levels in a Japanese population and comparison with acrylamide exposure assessed by the duplicated method or a food frequency questionnaire, Nutrients, 12, 3863, 2020



アクリルアミドは還元糖とアスパラギンが120℃以上で加熱されることで生成します。1999年に国際がん研究機関(IARC)はアクリルアミドを「ヒトに対しておそらく発がん性がある (Group 2A)」と定めました。以降、アクリルアミド摂取とがんとの関連に関する研究は欧米を中心に精力的に行われています。


アクリルアミドはポテトチップスやフライドポテト、コーヒーなどの食品とたばこの煙に多く含まれることが分かっています。そのため、人における主要な曝露源(何からアクリルアミドを摂取するか)は「食事と喫煙」です。


近年の研究結果から、食事由来のアクリルアミド摂取とがん発症とは関連がなかったという知見が多く報告されています。しかしながら、これらの多くはアンケート調査によってアクリルアミド摂取量を推定しているため、一定程度の誤差が生じている可能性があります。また、喫煙による影響も考慮しきれていません。これらの課題を解決する方法としては「生体指標*」を活用する方法があります。


近年、欧米ではこの生体指標を利用した研究が行われていますが、日本人集団を対象とした疫学研究ではまだ報告がありません。

そこで本研究では、日本人集団を対象としてアクリルアミド摂取の「生体指標」である「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」を測定し、初めて報告しました。また、それらを2種類の食事調査法から推定したアクリルアミド摂取量と比較検討しました。

本研究の方法および成果の概要についてまとめました。


*アクリルアミドばく露量を反映する生体指標とは?
アクリルアミドが体内に入ると、代謝の過程において一定の割合で血液中のヘモグロビンと結合し、「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」を形成します。
ヘモグロビンの寿命が約4ヶ月であるため、この「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」を測定することでその人の過去4ヶ月間の平均的なアクリルアミド摂取量が分かり、これがアクリルアミドの「生体指標」になります。


【研究方法の概要】

茨城県つくば市、東京都町田市、神奈川県相模原市およびその周辺地域に在住する89名を対象として血液を採取し、2種類の食事調査を行いました。血液からアクリルアミドの生体指標である「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度を測定しました。また、食事調査から食事由来のアクリルアミド摂取量を推定し、それを「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度と比較しました。


◇ 2種類の食事調査法

陰膳法
その人が食べたものと同じものを用意してもらい、それを回収して科学的に分析する方法。非常に精度が高いが、多人数への実施は困難。
・食物摂取頻度調査票
147食品で構成されたアンケート調査票で過去1年間の平均的な摂取量を推定することが可能な方法。精度は中程度だが、多人数への実施が可能。

【研究の主な結果】

日本人集団の「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度を測定した結果、非喫煙者では8.4(pmol/Hb)、喫煙者では85.5(pmol/Hb)でした。これまでの研究から日本人は欧米人と比べてアクリルアミド曝露量は少ないと考えられてきましたが、本研究結果では曝露量は欧米と大きく変わらないことを示しました (図1)。



また、「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度と食事調査法から推定したアクリルアミド摂取量を比較しました (表1)。

対象者全体(89名)を喫煙状況を調整したうえで解析した結果、陰膳法・食物摂取頻度調査票からの推定値は生体指標の「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度と相関を示し、食事調査法を利用した対象者のアクリルアミド曝露量の順位付けが可能でした。一方で、喫煙状況別に解析した結果、非喫煙者 (71名)ではある程度の精度で順位付けが可能でしたが、過去喫煙者(10名)・喫煙者 (8名)では順位付けは困難でした。



【この研究結果からわかること】

今回の結果は、日本人集団のアクリルアミド曝露量はこれまでの想定よりも多く、アクリルアミド曝露量が多いとされる欧米と大きく変わらないことを示しました。そのため、今後はこの「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度を利用し、日本人におけるアクリルアミドの発がんリスクを疫学的な手法によって検討していく必要があります。



現在、「アクリルアミド-ヘモグロビン付加体」濃度を利用した研究を引き続き検討しています。今後の成果を楽しみにお待ちください。また、これまでのアクリルアミドとがんの検討した研究の実施内容や成果についてこちらのページでまとめていますので、併せてご覧ください。